『田園の詩』NO.91 「趣味の完結」(1998.12.15)



 狩猟が解禁となり、土日ともなれば、近所の山でイノシシを追う犬の声が聞こえてき
ます。

 そんな折り、北海道のある町で、ハンターが撃った鹿をそのまま放置し、その鹿の肉
を食べる鳥(ワシかタカだったと思います)が、鉛の弾まで食べて死ぬケースがあるの
で、対策に乗り出したというニュースを耳にしました。

 人には、それぞれ趣味・道楽はあるもので、「殺生(狩猟)は止めよ」と説教じみた
ことはあえていいませんが、撃った鹿をそのまま放置する行為は許せるものではあ
りません。

 当地では、仕留めたイノシシは皆で分配をして持ち帰っているようなので、それが当
たり前だと思っていた私は、このニュースにショックを受けました。

 先史以来、人類は自然の生物の命をもらって生きてきました。狩猟がレジャー化した
とはいえもらった命は大切にしなければいけないと思います。

 以前、私達夫婦が奈良市のアパートに住んでいた時、隣のご主人が渓流釣りが趣味
で、釣った魚を自ら三枚に下ろし、刺身やフライにして、よく届けてくれました。どんな
小さな魚でも見事に料理されていました。

 自然からもらった命(魚)を決して粗末にしないご主人の気持ちと、その料理の美味し
かったことは、今でも忘れることができません。

 趣味・道楽もここまでやって本物でしょう。私も、毎年この時期になると道楽で山芋掘
りにいきます。この山芋、料理の仕方はいろいろありますが、まず皮をむかねばなりま
せん。奈良の隣のご主人に教わったごとく、趣味・道楽の完結はここまでやってこそと
思い、皮むきは私の仕事と決めています。


      
    木にからまる山芋のツル。今冬はどんな芋が育つのやら・・・。 (09.7.27写)

 しかし、これにはもう一つの訳があります。実は女房は山芋に触れると手が痒くなる
のです。こんな人は結構いるようです。

 いつだったか、難儀な皮むきとスリ下ろしをしてもらった山芋を食べながら、「口の中
は痒くならないからいいネ」と女房がいったのには、返す言葉が私にはありませんで
した。                         (住職・筆工)

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